プログラミングスクール運営者が語る未経験転職とSI・Web業界【イベント参加レポ】

記事更新日: 2021/02/10

ライター: いまり

いまり

こんにちは、BtoC電機メーカーエンジニアの『いまり』と申します。

2021年2月6日、プログラミングスクールRUNTEQ代表『ひさじゅ』さんと、同じくプログラミングスクールRaiseTech代表『江並』さんの対談イベントに参加してきました。

そのイベントの題名は、「『今からでも』未経験からエンジニアになれるの?」です。

今回はこのイベントをレポートという形で、内容や感想を振り返っていきたいと思います。

 

主な内容は下記のようなものでした。

対談イベントの内容

  • SI業界とWeb業界の違い
  • どんなひとがどっちの業界に向いているか?
  • 未経験からエンジニア転職の市場におけるコロナ影響

感想としては、経験豊富なエンジニア・経営者・プログラミングスクール運営者だからこその濃密な情報が盛りだくさん…!大変有益なイベントでした…!!_:(‘ω’ 」∠):_

特に意外と明確には語られないSI業界とWeb業界の違いには、色々と勉強になりました。

 

…少々余談ですが。

このレポートについて、イベント主催のRaiseTechさんとRUNTEQさんから、ご紹介・お褒めの言葉を頂きました!(´艸`*)

イベント主催者さんにも認めて頂いた記事なので、業界のことや未経験採用の転職状況などについての情報がしっかりまとまっていると思います。

未経験からエンジニアになりたいけれど…、

  • どの業界を目指すか決まっていない…。
  • どの言語を勉強すればいいのかわからない…。
  • 転職するのにオススメの業界は?SI・Webってなに

いまり

こんなことに悩んでいる方には、ぜひイベントから得られた情報を共有したいなと思います!(`・ω・´)ゞビシッ

 

イベントの概要

イベントの流れはこんな感じでした。

イベントの流れ

  • 最初にSI業界・Web業界の違いについて議論
  • 以降は順次チャットの質問にお2人が回答

Zoomによるオンラインイベントで、大部分が参加者のチャット質問に対して、順次ひさじゅさんと江並さんが答えていくような形式でした。

開始時刻にZoomに参加してみると、「ふーっ……」とタバコをふかされていたのか(?)大変リラックスした雰囲気が流れていたアットホームなイベントでした笑

内容と感想ですが、時系列ではなくハイライトという感じでまとめていきます。

個人的に印象に残ったところが中心になりますが、悪しからず!\(゜ロ\)(/ロ゜)/

 

SI業界・Web業界の違い

SI業界とWeb業界の違いについて、お2人の経験を交えて多くの情報・意見が交わされました。ざっくりまとめれば、

SI業界・Web業界の違い

  • 開発対象について
  • 言語の違い
  • 働き方
  • 文化や性格

そもそもSI業界・Web業界って全然ピンと来ない…という方もいるかもしれませんが、転職業界でよく言われる表現で分類すれば下記です。

SI業界・Web業界のざっくりとしたイメージ

  • SI業界 → SES, SIerなど
  • Web業界 → Web系自社開発など

定義ではありませんよ。厳密には正しくない表現だと思います。

ただ、こういうまとめられ方をよくされていて、エンジニアへの転職を検討している方はなんとなく「ああ、アレね」となるんじゃないでしょうか。

これらについて詳しい情報がイベントでは語られていました。気になる方は、このまま続きを読んでみてください(`・ω・´)ゞ

 

SI業界の開発対象はお堅い?

江並さん曰く、SI業界とWeb業界の主な違いとして、Web業界は自社独自のWebサービスを開発していることが多いということ

一方、SI業界は他社のシステムを開発して納めている(受託開発)

SI業界の中でSIerやSESなど契約や取引条件に違いはあったりしますが、どちらにしても他社のシステム開発をしている点は共通しています。

そして、”SI業界の開発対象となるシステムはお堅い”と江並さんは表現されていました。

いまり

”お堅い”ってどういうこと…?笑

SI業界の顧客は、金融・保険・製造業などがほとんど。

金融というのは、つまり銀行とかです。

そういったところに納めるシステムでは、金利計算とかがあって、金利っていうのは法律でガチガチに決まっているから、もしちょっとでもミスしたら一大事…。

そんな理由から、あまりリスクを取るような開発の仕方はしないし、プロジェクト推進もミスがないようにじっくり着実にやっていく文化のようです。

これを江並さんは、「もとがお堅いからか、開発システムもお堅い」と仰っていたのです(笑)

いまり

なるほど、とてもわかりやすいです。

(そして、江並さんのユーモア笑)

 

開発言語の違い

「SI業界とWeb業界では、主要な言語も違ったりするのでしょうか?」

そんな質問に対して、

「全然、違う!」

それが両名の意見でした。

 

江並さん曰く、SI業界ではJavaが多いけれど、これには2つの理由があるとのこと。

SI業界にJavaが多い理由

  • ”静的型付け言語”の特徴から、他人のコードも理解しやすく引き継ぎしやすいから
  • 歴史が長く実績豊富な言語で、信頼性が高いから

1つ目は、Javaは他人のコードも理解しやすく引き継ぎしやすいからという理由。

SI業界が開発するのはほとんどが大規模システム。

フロアに100人とか200人とかがいて、同じシステムを開発しているなんてこともある。

そのぶん人材の入れ替わりや引き継ぎが多く、それにJavaの”静的型付け言語”の特徴が有利だから、ということでした。

いまり

引き継ぎが前提だから、というところがポイントですね。

 

開発スパンや顧客先の運用期間が長期で、その間に人材が入れ替わることを想定しているのもあるんだと思います。

2つ目は、Javaの信頼性が高いから

江並さん曰く、「例えば、できて3ヶ月の言語があったとして、それを使うとしても、それが大丈夫なんて誰が保証するの?」ということでした。

顧客が大企業で、システムも大規模で巨額のお金が動いていて、納期が明確に決まっているような状況だから、不安要素は一切無くすようにするという考え方みたいです。

だから、SI業界では、昔からあり実績も豊富なJavaを好んで使用する傾向にあるとのことです。

いまり

確かに開発言語の保証なんて簡単にできませんものね…。

世界中で使われていて完成された言語があるなら、優先してそれを使うのが最も低リスクなのは頷けます。

 

Web系企業はRuby多数、ただし大規模になるとJavaを使用することも

一方のWeb業界はRubyを使用することが多いとのこと。

ひさじゅさん曰く、Web業界ではとにかく開発スピードが重視されるため、Rubyなどの開発しやすい言語が使われる傾向にあるみたいです。

ただし面白いのは、Web系のベンチャーも成長して大規模になるとJavaを使うこともあるみたいです。

その理由には、

  • メンテナンスのコストを下げるため
  • 処理速度を上げるため

などがあるようです。

江並さんも仰っていましたが、実際にYah○oなどはJavaを使用しているようですね。

また同じ理由から、Javaと同じく静的型付け言語のScalaとかGoとかも使われたりもすることもあるとのことでした。

 

働き方・文化の違い

「SI業界とWeb業界とでは、働き方が全然違う!」らしいです…!

ざっくりお2人が仰られたことをまとめると…、

SI業界の働き方・文化

  • ”リスク取って他人に迷惑掛けるな”の風潮
  • 個人的な実績を出しても評価されにくい・突出しづらい
  • ハンコ文化もあり、稟議など政治力も必要とされる
  • 同じプロジェクトに100~200人の大規模開発
  • 上層部の年齢層は高い(50~60代など)

Web業界の働き方・文化

  • リモートワーク・私服勤務・働く時間帯も自由度が高い
  • 仕様書などのドキュメント類はあまり作らない
  • リスクを取って行動する人が好まれる
  • 開発チームは10人など少数精鋭
  • 年齢は全体的に若い

江並さんが仰ったSI業界の特徴は、全体的にいわゆる”日本の大企業”らしいものでした。

上記のポイントはいま読んで頂いている皆さんにも、きっと見覚えあるものですよね。

背景として、やはりSI業界の顧客に金融系や製造業の大企業が多いことにあるようです。

ミスは絶対にできないし、彼らの文化に合わせて自然とそうなっているみたいですね。

いまり

銀行などの顧客と打ち合わせするとなったら、自然と服装はスーツになりそうということも確かに想像できますね。

一方、Web業界についてはなかなか自由な雰囲気のようですね。

最近ではネット上でWeb系エンジニアが推されていることが多い気がしますが、こういうところを見ると昨今の風潮では人気になりやすいかもしれませんね。

 

未経験から転職するならSI業界・Web業界のどっち?

SI業界とWeb業界の違いが語られるなか、「未経験からエンジニアへ転職するならどっちの業界がオススメ?」という質問が飛びました。

いかにも気になりますよね。

さて、ひさじゅさんと江並さんの意見は…、

 

「好みによるんじゃない…?」

 

ということでした笑

そこで議論されたことをちょっとまとめていきますね。

 

年収はSI業界・Web業界で違うのか?

お2人の感覚値として、各業界の未経験転職の初任給の相場をお話し頂きましたが、どちらの業界も平均年収は300万からスタートみたいなイメージらしいです。

江並さんによると、もらえるほうだとしても、350~400万円、それ以上はかなりレアということでした。

ひさじゅさん曰く、企業によっては年収200万とかを提示してくるWeb系もあるという話でした。

いまり

意外と渋いですね…!

 

プログラミングスクールによくあるエンジニアで高年収みたいなのはやっぱり怪しいんですかね…?

ただ、ひさじゅさんが言うには、スタートアップなら企業の成長とともに年収も段々上がっていくとのことでした。

年収1000万いくこともあるとか…!

一方のSI企業はそういう企業成長に合わせてということは少ない、というのが江並さんのイメージだそうです。

あくまで年功序列と出世に合わせて、ということみたいですね。

いまり

SI業界の年収は頭打ちしやすいから、外資系コンサルとかに転職するひとも多いとか…。

さて、ここまで聞くと「Web業界のほうがいいんじゃない?」と思う人も多いと思いますが、1つ注意点があります。

Web業界は倒産の可能性が比較的あるとのことです…!

自社開発サービスが上手くいけば伸びる、そうでなければ潰れる、ということみたいです。

SI業界は他社サービスを作るため、顧客が付いていれば売上は上げやすいから安定しやすいと、江並さん仰ってました。

いまり

年収に関しては一長一短ありそうです。

 

特別なこだわりがなければ、年収で判断しないほうが良さそうですね…!

 

性格によって向いている・向いていないがある

ひさじゅさんは、「Web業界ではリスクを取って素早く動けるひとが好まれる」と仰ってました。

典型的な例だと、「許可取る前にやって、あとで謝れ」という感じに(笑)

逆に言えば、「”安定しよう・リスクを取りたくない”というひとには向かない」とのことでした。

変化が大きい業界なので、都度対応できる人材じゃないとダメみたいです。

いまり

Web業界はリスクを取って積極的・自発的に働けるひとが向いていそうですね。

一方、SI業界は比較的どんな人材も受け入れる傾向がある、というのが江並さんの意見です。

ただ、前述のようにSI業界は「リスク取って他人に迷惑掛けるな」の文化。

自分でリスク取って仕事をどんどん進めても、評価されることはあまり無いそうです。

いろいろ挑戦して評価されたいならWeb系のほうがオススメ、ということでした。

いまり

積極性が好まれるWeb業界、それが評価されにくいSI業界。

 

文化は全く真逆のようです…:(;゙゚'ω゚'):

 

Web系スタートアップの責任って重くない…?

「小規模なスタートアップの仕事は幅広く、未経験者には責任が重過ぎるような気がします…」

こんなコメントがチャットに飛びましたが、これにひさじゅさんはバッサリ。

「Web系のスタートアップは、それ(責任ある仕事)を楽しめる人じゃないとダメ。向いていない。」

「むしろ責任ある仕事をたくさん任せてもらえると思うべき、責任を楽しめる人が向いている。」

とのことでした…!

いまり

この回答は個人的にはなかなか衝撃的で、これからエンジニアへの転職を考えている人の重要な判断基準になるんじゃないかなと思います。

 

現在の転職市場の状況

ようやく本題というか、イベントのタイトルからは最も気になる話題に辿り着きました…笑

現在の転職市場の状況ですが、ずばり「正直、かなり難しくなっている」という印象のようです。

現在、企業から求められている水準を述べれば、

「現場の人間とそつなくコミュニケーション(技術的な話含め)が取れて、即働くことができるレベル」

…だそうです。

いまり

いや…、かなりレベル高くありませんか…?

江並さん、ひさじゅさん両名とも仰っていましたが、RUNTEQもRaiseTechも、受講生を即戦力レベルに育てて未経験枠じゃなくて普通の中途採用枠で就職するようになっているイメージのようです。

江並さんがもう少し突っ込んだ言い方をしていましたが、

「正直、現場は未経験者の技術力には期待していない」

「わからないなりに仮説を立てて、確認しながら仕事を進めてくれる人」

「一言で言えば、”なんとかしてくれそうな人”を求めている!」

とのことでした…笑

いまり

企業側の教育コストが削られていることが原因のようです。

 

求められるサービスのレベルも上がっているため、新人教育に構っている暇がないというのが実際のところのようです…!

 

30代以降の未経験転職について

ひさじゅさん曰く、Web業界は31~32歳あたりが未経験転職の限界。そこを超えるとどんどんハードルが上がるとのことです。

理由は、Web業界が年齢層が全体的に若いため、30代にもなればマネジメントも求められるためです。

なので、RUNTEQでは30代後半の方が相談に来た場合、リスクあることを前提に徹底的に意思確認を行うようですね。

実際、ひさじゅさん自身もWeb業界の30代未経験の転職はほとんど聞いたことがないそうです。それはRUNTEQに限らず、です。

いまり

Web業界に挑戦するなら、なるべく20代。

 

30代以降はかなりリスキーな選択のようです…。

一方のSI業界は、比較的受け口は広いようです。

ただ、40代だと流石に厳しい印象と、江並さんは仰ってました。

 

転職市場へのコロナ影響

2020年~2021年コロナウイルス流行は大変なインパクトを経済市場に与えていますが、未経験エンジニア転職市場ではどうなんでしょうか?

実際、転職のハードルは少し上がってしまっているみたいです…。

ただし、それは単純に需要が減ったというわけではなく、リモートワークの普及が原因のようです。

リモートワークが増えて、未経験者のサポートが難しくなっている。本人の実力にかなり依存しやすい環境になってしまっていることに由来するとのこと。

いまり

未経験者には厳しい状況です…。

 

なるべく現場レベルに近い実力を身につける意識が必要なようですね…。

 

今後の転職市場の状況

イベントの最後には、江並さんからの締めくくりのコメントがありました。

江並さん曰く、「今後も未経験者の転職のハードルは上がっていく」そうです。

求められる技術レベルが上がっていくことに加え、プログラミングを学校で学んだ学生達も参戦してくる。

なので、転職したいなら「早く初めたもの勝ち」

「モタモタするくらいなら、いま動いたほうが良い」ということを仰っていました…!

いまり

未経験からエンジニアに転職したいひとは、どうするか早めに考えたいところですね…!

ひさじゅさんからは、「まずは業界によって何が違うのかをしっかり理解して、どこに進みたいかを決めるべき」という堅実な意見を頂きました。

「必要なスキルはその後で勉強すべき」だと。

「頑張ればWebエンジニアには確かになれるし、未来を感じれる業界なので興味があればぜひ目指して欲しい」とのことでした…!

いまり

まず業界を把握すべきというのは納得です。

 

SI業界とWeb業界の文化が180度違うことはわかりましたし、エンジニアという言葉の意味もとても広いです。

 

ちゃんと業界研究をして、明確にした目指すべきエンジニア像に向かって努力していきたいですね。

 

【まとめ】濃密な情報だらけの素晴らしいイベントでした!

こんな感じで振り返りを終えます。

SI業界とWeb業界の違いをニュアンス含めて学べたことが、個人的には大収穫でした!

なかなか調べてもこんなに詳しい情報は得られませんでしたから…!

これからエンジニアを目指す方々は、ぜひ参考にしてみて欲しいです。

そして最後にここで言うのもなんですが、運営の『スタートアップテクノロジー』さん、お疲れさまでした!RUNTEQひさじゅさん、RaiseTech江並さん、大変貴重なご意見ありがとうございました!

またの機会があれば、次回も楽しみにしております!

この記事を書いたライター

いまり

某国立大学にて物理学を学んだのち、誰もが知っている大手電気メーカーに入社。大半の日本人が一度は使用したことがあるであろうBtoC製品を開発している組み込みエンジニアです。

* ハードウェア開発歴:4年
* ソフトウェア開発歴:1年
* ARMマイコンを使用したシステム開発経験あり
* 所有特許:4件

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